高知県・安芸市にとても素敵な作品を作っている木工作家がいらっしゃると話を聞いて、夏の暑いさなかにギャラリー&工房にお邪魔した。
古い家が立ち並ぶ住宅地に、突然濃いグレーのトンネルみたいなエントランスが現れた。トンネルは十メートルくらいも続くだろうか。異次元へ向かうようなトンネルを過ぎたら、そこは天井が高くて広々とした開放感のあるギャラリーだった。
迎えてくれたのは、可憐な印象の女性、それが小原典子さんだった。ギャラリーの中に入るとズラリと作品が並んでいる。家具からスプーンなどの小物まで実に多くのバリエーションがある。女性一人でこんなにたくさんの作品を作るのか、とまずその質量に驚く。
次に棚に並ぶ様々な木のボウルの造形美に目が釘付けになった。なんて美しいのだろう。この人の作るものは、もの自体が意思を持っているのではないかと思う。
確実な存在感に満ちている。それらは、桜、ブラックウォルナット、オーク、メイプル、杉など様々な木の個性を生かしつつ、静かに私たちに対峙する。
なぜ木工だったのだろう?
「祖父は林業が生業でした。小さいころ、山奥に住む祖父が枝打ちしたり、木の世話をするのをずっと見てきたので、木は親しみのあるものでした。今でも、自然が好きで山に行くのが好き。そんなわけで木工を選んだのです。」
そして、「植林した木は触りたくないのです。もともと好きなのは、紅葉する雑木。そして実のなる木が好きです。」
そういうわけで、小原さんが扱うのは、栗、くるみ、チェリー、ブラックウォルナットなどの実のなる木。自然林に生えているトチの木、桜、そして高知ならではのゆずの木など、柑橘系の木々も好きなのだとか。
「自然林の木々は、私たちを和ませてくれるでしょう。そういう木を扱いたいと思っています」
ご本人の作品もどこかしら優しくユーモアのある形をしたものが多い。「自然の中にある有機的な形が好きなのです」。
とはいえ、「一人で作っているから、なかなか数を作れないし、こういうもの作りでいいのかなと日々考えてしまいます。」
ギャラリーには、なぜか大きなコーヒー焙煎機がどんと置かれている。
「木工を作れなくなったら、コーヒー豆の焙煎でもしようかと。」
とんでもない。小原さんにしか作れない作品の数々は木のものが好きな人が見たら、たまらなく魅力的だ。フチがゆるやかなカーブを描く形の浅いボウルや、ヨーグルトカップ類は、「くり抜くのが大変で、腱鞘炎になったことも。」という小原さん。
大きめのボウル類は、1点もの。カレーによさそうな長めのスプーンは、唇に当たった感触が良いようにギリギリまで薄く仕上げ、デザインも使い心地も最高だ。
一つ一つのディテールに、徹底的にこだわり抜く小原さんのクリエイションには、のどかさと同時に静かな闘志すら感じる。ずっと愛用したいものたち、身近に置いて使ってみませんか。
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小原 典子 プロフィール
1961年 高知県安芸市に生まれる。
1981年 奈良芸術短期大学 デザイン科 卒業
1982~1983 同デザイン研究室 副手勤務
1984 同デザイン専攻科 修了
1984 高知に帰郷
1993 高知県安芸市に木工房〔 遊木民 〕 設 立
1996~2010個展を中心に活動する。高知大丸、他ギャラリー等
〔 木工品の他に水彩画、版画含む〕
〔1997 高知県立牧野富太郎記念館内、展示室のテーブル、イス制作〕
〔1999 朝日現代クラフト展 招待〕
2010 OHARA WOOD WORKS ギャラリー開設
2013 クラフトフェアまつもと 出展
2017 ヴィレッジ〔高知〕 出展
現在に至る。
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