編集者から転身。今メディアで大注目の酔いどれ料理研究家・稲葉ゆきえさん。中編


◆震災をきっかけに、編集者から料理家へ転身!!

自宅で料理教室を始めてから1年後、スヌ子先生は東京・日本橋にキッチンスタジオをオープンさせます。友人知人が生徒だった自宅でのレッスンから、キッチンスタジオに場所を移す際、生徒さんをブログで募集しました。



「集まってくれたのが12名。蓋を開けたら、うち半数が出版関係の人でした。私は出版社に勤めているとは一度もブログに書いたことがなかったのに。同じような環境の人が集まるのが面白かった。その人たちの発信力が、後の口コミにつながりました」



けれど、会社勤めのかたわらだったため、月1回のレッスンはそのまま。とても一本立ちできるような状況ではありませんでしたが、東日本大震災をきっかけに独立を決意します。「いつ死ぬかわからない。このまま会社にいるより、もっとダイレクトに人の役に立てることがあるのでは。何より、やりたいことをやろう!」と。



会社を辞めて、料理教室に本腰を入れ始めるも、当初は珍しい調味料や高級食材をふんだんに使い、原価は度外視。

「自分ならこういう教室に行きたいと思うことをやっていましたが、予算という認識がなかった(笑)。そこで、お代わりのワインはグラス売りすることにして、お料理に合うワインの提案を始めました」。



これが功を奏します。スヌ子先生のところにくる生徒さんたちは、お酒好きの方が多かったのです。加えて、料理教室なのに、「料理はしません」と言い切ってくる人も多い。

「外食が大好きで、レストランで出される料理がどういう組み立ててこういう味になるのかが知りたい、と。そういうニーズがあるのかって驚きました。そこで、生徒さんの要望に合わせて、アイディアや組み合わせを簡潔に伝えるクラス、しっかりデモをやるクラス、手早く仕上げるクラスと、それぞれのレッスンの方向性が定まっていきました」




◆ジャンルに当てはまらないスヌ子流レシピ

スヌ子先生のお料理は、雑誌編集者として、またワーキングウーマンとしての視点を生かした手軽で華のあるレシピ。真骨頂は、「これってフツーやる?」というような意表を付く食材や調味料の組み合わせ。だから何料理とも言えない、ジャンルが入り混じったちょっと変わった料理が多いのです。それは、料理好きのお母様の影響とか。



「両親が朝からお酒を飲んでいるような、お酒が好きな家で私は育ちました。当然、母はお酒に合う料理を作るのでおつまみみたいな料理も多かったですね。母は外国が好きで、たとえばNHKの番組で原住民が食べているのを見て、『このお鍋はなんだ!!』と食い入るように観て、それを自己流に作って食べてみるような人。変わった料理がいつも食卓にのぼっていました。だから、『何料理が得意ですか?』と私もよく聞かれるのですが、未だにわからないです。だって、お浸しにはうちは普通にクミンを入れますから」



スヌ子先生は、料理教室を開講するにあたり、インストラクターを目指す人向けの大手の料理学校に通いました。その時に習ったのが、あまりにも手間暇かけ過ぎている料理で唖然としたそう。



「これが一般的なら、自分がやっていることはちょっと変わっているのかもしれない。それならマイノリティなりに発信していけば、わずかながらニーズがあるに違いないと思いました」

がんばらなくてもできる、簡単でおいしい、ちょっと変わったレシピ。それがスヌ子流のお料理なのです。(つづく)

文/名須川ミサコ

はな組 公式サイト

「はな組」とは、編集者・博多玲子と、ライター・名須川ミサコの2人で始めた地方活性応援ユニット。地方の魅力を伝えるべく全国各地をまわり、“ニッポンのお宝” と言える美味や手仕事を発掘。それらをイベントやホームページ、ECコンテンツなどで伝えています。

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